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Subject: 免許スタート

0.はじめに

MB5を始めとしたバイク人生。本格的には 19歳から乗った GSX250E KATANA と、続 いて21歳で購入した CBX400F。これは24歳で降りてしまった。それ以降10年以上 のブランクをおいて購入した CB400SF。これはとても良いバイクである。

しかしライダーとして返り咲き、周りを見渡すと中型車はむしろ少数派である。巷 のライダーが集まる場所にはネイキッドであれば CB1300F,ZRX1000, XJR1300,など、 昔はやりのフルカウルのレーサレプリカみたいなものでさえGSX1300Rハヤブサ、 ZX-12RNinja などなどの大型車ばかり。 そう、1996年の免許改正で、大型二輪車は教習所で免許が取れるんだった。そして 国内販売車両の排気量上限も、750ccではなくなっている(馬力上限はメーカ自主 規制の 100psのようだ)。昔のライダーの花形であった「ナナハン」もいまや極度 に冷え込んだ市場であり、そのラインナップは悲惨である。これって教習車用の需 要しかねぇんじゃねぇのって感じ。名車CB750Fもこの6月でラインナップを外れた。

さて、それはさておき、とにかく巷の大型バイクの多い事甚だしい。 自分には400ccでさえ過分だと思って購入したバイクであるが、なんとなく肩身の 狭い思いである。もちろん自分が気に入って購入したバイクだから不満はない。し かし上の存在(手の届くであろう)を知ってしまうと性格的にどうも落ち着きがなく なるのも事実である。 バイク屋で早速「いやぁ周り見てたら大型二輪欲しくなっちゃいましたよ」って言っ たら、冷たく「せっかく買ったんだからもうちょっと乗ってやってくださいよ (-.-#」と怒られてしまった。バイクが売れるんだからいいってんじゃなくて本当 にこの人はバイク乗りなんだなと思った。 ま、すぐ買う買わないはさておき俺はとにかく免許だけは欲しくなった。とある日、 近所の大型二輪もやっている教習所にいってみた。おーおーみなさん CB750F で教 習してんじゃん。おあ、教官にタンデムで乗せられてめちゃくちゃスラロームさせ られてる奴もいらぁ。若ぇ奴が喝入れられてんだなぁ。あらぁしょんべんちびるか もな。

で、料金表をもらった。なになにじゅうさんまんえんだぁ?その内半分は入校金で すとぉ!?まぁほんとに免許取れるんならそれでもいいけど、なんか金で免許買う みたいだ。。。。ま一先ず検討だな。 と思っている時に、以下のレポートを読んでしまった。何処のページであったか失 念してしまったが、これを読んだときの衝撃は大きかった。感動した。自分もそう なりたいと切に思った。

金の問題ではない(こともないけど)やっぱ一発免許!これでしょう。

では、読んでみてください。
※これを見たのは 2000年6月23日(金)のことである。
※これがきっかけで一発免許人生が始まったといっても過言ではない。



はじまりは・・・ 

  大型免許を取得しよう!と決めたのは、中型免許を取得して14年後の30歳になっ
てからである。

  今まで大型免許へのあこがれは常にもっていたが、試験所に通う時間も無かったし、
私が住む埼玉県は日本一難しいと言われていたこともあり、事実上無理だと思ってい
た。そんな状況だったので、逆に興味を示さない様に努めてきたぐらいである。

  しかし、一つの記事が眠っていた欲求を覚ますことになった。それは、「来年から
実施される教習所での大型実地試験免除」(当時96年11月)である。このおれに
も大型免許を取れる可能性がでてきたのだ。その頃、アフリカツインが気になる存在
になっていた私にとって 一気に気分が大型免許取得へ傾いていった。当時、トラン
ザルプ400に乗っていて高速ツーリングを行っていたが、高速での非力さを感じざ
る負えないバイクだったので(悪くはないのだが)、余計に高速を「クルージング」
してみたくなっていた。

 「よし、大型免許をとるぞ!!」と思い出したのである。しかし、そんな気持ちにな
ると教習所が始まるまで待っていられなくなってしまった。(実は、免許を取った時
に、この時の本当の気持ちが分かるのである)

  その思いをぶつけにメカハウスへ行ったところ一発試験を受けるのであれば、 
「自動二輪安全運転講習を受けることが合格への近道だね」と、具体的な指導をされ
てしまった。次の行動が分かってしまうと、もう止めることも、止まる必要も無くなっ
てしまった。

「わかりました。受けます」
=====
自動二輪安全運転講習参加 (準備)

メカハウスで参加申込往復はがきをもらい、早速送った。3日後には受講表が送られ
てきた。受講日は2週 間後である。

  この日から大型への道程がスタートした。時期を同じくして「めざせ大型二輪免許」
なる本を購入し勉強に入った。講習受講までに自分の技量や疑問点を明確にしたかっ
た。会社に通う電車の中で本を熟読し、休みの日は、荒川(近所にある関東では大き
な川)のあまり車が来ない土手を選んで「乗車姿勢」「乗車」「安全確認」「車線変
更」「交差点右折、左折」「急制動」「スラローム」「一本橋のための超徐行走行」
「降車」を本の手本(写真付きだった)を元に全て行って見た。結果、ボロボロだっ
た。こんなにも癖がついて抜けられなくなっているとは。

  大変なことになったと思った。一番ひどかったのが車線変更である。車線変更の手
順は、
         ・車線変更が可能かミラーにて後方確認する。
         ・ウインカーを出す。
         ・ミラーにて後方確認する。
         ・目視により後方確認する。
         ・前方を見る。(姿勢を元に戻す)
         ・車線変更する。
         ・ウインカーを消す。

であるが、頭で分かっていても体が反応してくれない。ウインカーを出すのと目視が
いっしょになってしまったり、ウインカーを出し忘れたり、いらつくほどにできなかっ
た。

  練習あるのみである。土手の幅をいっぱいに使って車線変更の練習を繰り返した。
=====
自動二輪安全運転講習参加 (準備) 

  車線変更は「リズム」である。頭の中でリズムを刻み一つ一つの行動にメリハリを
付けるで体に憶えさせることができた。あとはこのリズムを忘れないように機会があ
る度に行うことである。それは何も単車に乗っているときのみではない。私は、ちょっ
と(だいぶかも)変であったが通勤電車の中でそれを行った。座席に座れるたび目を
つぶって車線変更動作をイメージしながらリズムを思い出していた。そうすると、ど
うしても首や体が微かに動いてしまっている。(当然左手の親指は動いている)隣の
乗客はきっと変な奴だと思っていたことだろう。

  車線変更の話が長くなってしまったが、他の練習項目でもう一つだけ問題が残って
いた。それは「指」である。日頃ブレーキとクラッチは、人差指と中指の二本をそれ
ぞれ使っている。が、試験ではそれは許されない。操作するときのみレーバーを4本
指で操作し、操作終了後は、素早くグリップに戻さなくてはならない。意識している
時は問題無くできるが、ふっと他のものに集中すると2本の指がちゃっかり飛び出て
いるのである。しかしこの問題は練習中に自然に克服できた。

  ここの見出しは「自動二輪安全運転講習参加」であった。講習会の話にそろそろ変
えよう。

=====
自動二輪安全運転講習参加 (1日目) 

  講習会は、当時「土曜日」と「日曜日」の2日間行われる。土曜日は自分のバイク
を使用して課題走行の練習。
  日曜日は750ccの単車が貸し出されその単車を使用して実際の試験コース(1
コース)を周りながら課題走行と法規走行を練習するというものである。

受付
 ̄ ̄
  土曜日は9:00集合である。受付けにて郵送されてきた受講書と受講料(¥50
00)を渡し、変わりにゼッケンをもらう。
  ここで思うことは受付は誰よりも一番に済ませてゼッケンNO1をもらうことが得
だということである。なぜかと言うと講習は全てゼッケン順に行われるのである。ゼッ
ケンNO1ということは何をするにも一番早くでき、なおかつ回数も一番多くできる
可能性があるからである。人数が多いい(私が受けたときは30人近くいた)時は真
ん中で2つのグループにわかれるのであるが、別れるかどうかは受付時にはわからな
い。だから一番が一番いいのである。講習も時間刻みで行われるため全員が同じ回数
を練習できるとは限らない。また、前の人が下手だとアドバイスを受けている間待っ
ていなくてはならない。

1日目講習
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
  講師は、埼玉県警の「白バイ隊」の方々と安全協会の講師(なぜかおばさんが多い
い)の方々だ。白バイ隊は5名いて内4名が女性の方だった。みなさんなぜか背が低
く、750ccの白バイがとても大きく見える。とは言えこの様な講習会の講師をす
るだけあって、動作はとても堂々としている。きっと私よりは年下であろう。「負け
られないな」と屈折したやる気を起こしてしまった。講習は、2つのグループに別れ、
外周をまわりコースになれることから始まった。もちろん女性白バイ隊が先導である。
外周がなれたところで、交差点通過やクランクなど、徐々に内側に入って多彩なコー
ス取りになった。

  スピードはなかなか早く、徐々に離されていく受講者もいた。これで体が暖まった
ところで次に「一本橋」「波状路」「急制動」「パイロンスラローム」の練習に入っ
た。

一本橋
 ̄ ̄ ̄
  一本橋は、安全協会の講師がストップウオッチをもって、一人一人のタイムを計っ
てくれる。一本橋は、ニーグリップと目線を遠くにすることが基本。アクセルは一定
に開き、後輪ブレーキと半クラッチで速度を調整する。ポイントは、スタートしてか
ら橋に後輪が乗るまで勢いを付けること。その動作に橋の長さの3分の1を使ったと
しても、後の距離でも10秒は何とかなる。この練習では10秒にこだわらず、何秒
であれば自信を持って渡れるかをまず知り、 そのあと、10秒に近づけることが自
信をもつ秘訣だと思う。本試験の時、脱輪したら検定中止であるが、10秒を切って
しまったとしても減点で済む。この差は大きい。

波状路
 ̄ ̄ ̄
  波状路は、段の間隔が一定でないため、思っていたほど簡単ではなかった。これも、
ニーグリップと目線が大切である。
  あとはアクセルワークで乗り越えた。波状路については、何度か練習すれば
難しいものではないと思う。

急制動
 ̄ ̄ ̄
  急制動は、一番自信を持っていた課題だ。これは如何に早い時期に40Kmに達す
るかである。急制動は急発進に尽きると思う。
  私は、半クラッチを思いっきり使い、2速へ入れた時には40Kmに達する様にし、
3速はただいれるだけにした。後はアクセルを一定にし、停止線がきたらゆっくりブ
レーキングするだけである。ブレーキングに入る前に アクセルを一定にできていれ
ば十分安全に止まれる距離である。

パイロンスラローム
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
  この日の練習は本試験用のコースは使用せず、外周の直線にパイロンを設置し練習
を行った。スラロームは アクセルワークとリズムそれとまたしても目線である(ニー
グリップは当然)。視野の下の方にパイロンを確認しながら進ん でいくが何といっ
てもリズムが大切である。本試験の時には7秒以内に通過しなければならないが、パ
イロンとパイロンとの間を通過するためには決まったリズムがあるため、そのリズム
を掴めば必ず7秒以内で通過できる。(と思う)

  上記に記述した内容は、安全協会の講師の方々のアドバイスや自分が感じた内容を
記述してみた。まとめて見ると、改めてニーグリップと目線が単車をコントロールす
る時のキーポイントになっていることが分かる。

  明日は初めて750ccに乗る。

=====
自動二輪安全運転講習参加 (2日目) 

  朝から興奮していた。今日は初めてナナハンに乗れるのである。今まで無理して我
慢していた”しかめっ面の欲望”が笑顔に変わっている。受講前、待ち合い室で待っ
ていると、講師の方々が倉庫らしい場所から次々にナナハンをコースに出している。
いろんな車種がある。到底試験には使われないであろうGPX750Rなどもある。

  今日の目的は、ナナハンになれることがであるから、なるべく試験車両であるCBを
ゲットしたかった。しかし今日もゼッケン順である。たしか前日と同じ番号だったと
思う。教習車両は、無造作に並べられた順に割り当てられた。
 「1、2、3、4・・・・」順に目で数えて行くと、そこにあったのはYAMAHAの
FZ750であった。アメリカンでも、ヨロピアンでもない。なんとも言えないバイク・・・
「俺の初めての相手はおまえか」。正直落胆した。(すまん)でもナナハンには変わ
りはない。

  早速、昨日と同じように外周を周ることになり、初めてのクラッチミート、「ググ
グッ」、今までに体験したことのないトルク感が下半身に伝わってきた。車体はトラ
ンザルプより小さいが確かに力強い。「なんて乗り易いんだ」

  走り出す前にあった恐怖感や不安感は、その場に置き去りにしたかのように無くなっ
ていった。低速トルクがあって非常に乗り易い。いままで、単純に「大排気量=難し
い」と考えていた私にとって目からうろこが落ちる思いだ。ニーグリップしにくいし、
ポジションも自分には半端なFZであったが、その時の自分には何よりもたのしい相手
に思えた。

  前日と同じように、白バイ隊を先頭に、外周路からだんだんと中へ入って多彩なコー
スを走った。
  体が暖まったところで一旦休憩し、その後、待ち時間を減らすために5〜6台づつ
に別れて複数の課題を順番にローティーションしていく講習形態に移った。課題と課
題の間にも、交差点通過や踏み切り通過など法規走行を取り混ぜた良く考えられた練
習コースになっていた。

  ここで初めての8の字も体験した。
  1mの道幅がある8の字だが実際にはパイロンが両端にあり若干車体を倒して走る
ため触れてしまうのではないかと言う心配があったが、その狭いなかにもコースどり
があり、講師は的確に走り方を教えてくれた。今日の練習にも、一本橋、波状路、パ
イロンスラローム、交差点通過(右折)、一時停止など、本試験を意識した練習になっ
ており十分な時間とは言えないがそれでも非常に有意義な練習だった。

  最後に「引き回し」と「車体起こし」を全員で行って終了だ。
  この講習には特典があり、最後の引き起こしと車体起こしを行うことで 本試験の
前に行われる事前テストが免除される。しかし、これぐらいできなければ当然試験に
は合格しない。

  しかしこの日、私は、重大なミスをしていることに気づかされたのである。
  それも2つ。

  1つは自分のバイブルとして使っていた本には、埼玉県の試験コース図がご丁寧に
掲載されておりそれを一生懸命憶えていたのであるが、既に変更になったことを知ら
された。
   加えて、新しいコース図は試験所内の売店にしか売っておらず、その日に入手す
ることができなかった。(その日、売店は営業していなかった)

  もう一つは、試験の申込である。

  大型二輪試験の申込は、何曜日だったか失念してしまったが、限られた曜日のしか
も朝8時50〜9時05分とわずかな時間にしか受け付けていないことを知った。
  なんて計画性がないのであろうか。どうやって申込をするのか全く気にして
いなかったのである。結局、申込とコース図を買いに会社を休むことになった
のだ。

  コースは2種類設定されている。しかもどちらのコースで試験をするかは試験当日
でないとわからない。結果、両方のコースをしっかり憶えておかないとだめなのであ
る。
   申込から試験日までは2週間ぐらいしかなく、その間、バイクも乗れず、100%イメー
ジトレーニングになってしまった。

試験日は、1996年12月6日午後である。

=====
挑戦! 

  1996年12月6日
  とうとう、この日が来た。

   試験所に向う車の中(体を冷やさないために車にした)で、自己陶酔するために、
「おまえはできる」「おまえはできる」と念仏の様に延々と唱えながら運転していっ
た。この日の出来事は、「緊張」の一言だ。

  コースの下見をした後、待ち合い室に行ってみると、既に今日のコースが張り出さ
れていた。1コースだ。1コースは外周を周った後にすぐ、一本橋、波状路、パイロ
ンスラローム、急制動と課題走行に入るパターンである。

  当日、30名以上の受験者がおり、私は受験番号「17番」だった。
  試験車両2台を使って、半分に分けて1番と15番から始まることになった。

  すぐに自分の順番が回ってくる。もう、何も考えられない。やるのみである。
  バスケットをしていた頃から、「伴野は本番に強い」とよく誉められていたことを
思い出し「大丈夫、できるよおまえは」と言い聞かせていた。

  しかし、初っ端から失敗することになる。

======
スタンド 

  試験は、当然乗車前チェックから始まる。外見をチェックする仕草をした後に、
「乗車」であるが
       1.ハンドルを持ち、前輪ブレーキをかけてバイクを起こす。
       2.サイドスタンドをしまう。
       3.後方確認をする。
       4.バイクにまたがる。後輪ブレーキをかける。
       5.ミラーを合わせる。
       6.クラッチを握り、キーをオンにし、ニュートラルを確認後、エン
           ジンをかける。
       7.右後方確認を目視し、前輪ブレーキをかけながら、右足をおろし、
           左足に入れ替える。
       8.ギヤーを1速にいれる。
       9.また、後輪ブレーキをかける為に足を入れ替える。

  今でも、はっきり憶えている。・・・しかしだ、当日はそれができなかったのであ
る。何と上記の2番をすっかり忘れていた。プラットフォームに立っていた次の受験
者が小声で何か言っている。「スタンド!スタント!」

  私はハッとし、前方を見据えたまま、そっとスタンドを閉った。
  ばれたかな?と思いながら前方を凝視していると。バイクに備え付けてあるスピー
カーから「はい、伴野さんスタートして」と声がかかった。
   徐に右手を上げて合図し、
        1.ミラーで右後方を確認。
        2.右ウインカーを出す。
        3.右後方を目視にて確認し、良ければスタート


  混合で試験をしているので、大型二輪以外にも普通、大型などいろんな試験車両が
既にコースにいた。だから「仕草」ではなく本当に「安全確認」をしなければならな
いのである。

  スタートはうまくいった。
  その後、障害物回避、車線変更。右折。見通しの悪い交差点右折、一時停止左折。
そして、一本橋である。
  一本橋は、停止線で止まり、計測のために試験官の合図を待たなければならない。
けだるそうに「はい、どうぞ」と右後ろのスピーカから聞こえてくる。 右手を上げ
て合図して(しなければいけない)から、スタートを切った。

=====
何が起こったか?!

  講習会で何度も練習したところだ。思い切って行った。
  10秒行ったのかどうかわからないが、大きなふらつきもなくクリアーした。 そ
の後、そのままのスピードで波状路へ進入。 これもふらつきなくクリアー。
  Uターンしてパイロンスラロームである。

  ここでも計測のため試験官の合図を待つ。またもやけだるそうに「はい、どうそ」
が聞こえてきた。パイロンスラロームは自信のある種目だ。手を上げた後、行きよい
よくスタートしすぐに2速へ1、2、3、4、とリズムをとってクリアー!
  また、Uターンして急制動の停止線に止まった。

  私の予想では、またけだるい声が聞こえてくるはずだった。
  ところがである。「はい、直して」・・・・
  全然理解できなかった。

  試験官に聞こえはしないのに(そう思う)「えっ?はい?」と声を出してし
まう。そうすると
     「あ、えーと、もうちょっと前に出て」
     「そうそう、はい止まって」
     「左、見てごらん」

  この時になっても、自分には何が起きているのか、全く分かっていなかった。
=====
検定中止 

     「はい、直して」
     「あの、伴野さん、あなたおわりだよ」

  その言葉でやっと何か失敗をしたのだと理解しはじめた。
  左を見てみると、パイロンが微かにずれている。
 「そうか!タッチしてしまったんだ」やっと状況がわかったのである。

  バイクを降り、パイロンを直しにいった。ほんのちょっと当たったのだろう。 全
く感触がなかった。自信のある課題だっただけにショックを受け、と同時に 「検定
中止」の文字も否応なく浮かんできた。「負けた」・・・・そう思った。
   まだ、八の字も、坂道発進も、何もしていないのに・・・・

  一回で受かる訳がないと思っていたが、よりにもよってこれ(パイロンスラローム)
で落ちるとは。せめて完走はしたかった。

  その後は、全てをカットして、プラットフォームに直行である。

  それでも降車動作をしっかり行わなければいけない。降りたあとは、プラットフォー
ムに備え付けてあるインターホンに向って受験番号と名前を報告し、試験後のアドバ
イスを試験官から受けるのであるが、これといって何も話してくれなかった。そう、
もう失格が確定しているのだ。しかし、これで帰る訳には行かない。次の試験の予約
をしなければならないのである。

  しかもそれは、合格発表のあとに行われる。辛い時間が数時間続くことになった。
パイロンスラローム。解決しずらい課題となってしまった。自分ではクリアーできた
つもりであったため、どこをどう直せばいいのかわからないのである。この課題は7
秒以内に通過しなければならない。練習でも6秒台だった。 これ以上どうすればい
いのか?

  数センチ内側のラインを通ってしまったか、車体を倒し過ぎたか?どちらかわから
ない。既に実績は崩れ去った。自信がなくなったと言うよりもどうしたら解決できる
のか、それが分からなかった。

=====
振り出しに戻る

  つぶすことのできない時間がやっと過ぎてくれた。合格発表である。
  当然17番は呼ばれなかった。しかも合格したのはたった3人だった。30
人以上受験して合格したのは3人。合格率10%以下。話を聞いていた通りの
狭き門である。

  自分は一体いつになったら合格するのであろうか?
  このまま会社を休みつつ試験を受けていくのは無理なのじゃないか?
  いままで楽観的に考えていた自分が恥ずかしくなってきた。

  不安になりつつも次回の予約をとった。 一回受験すると理由は定かではないが、
1週間以上開けなければいけない。私は、緊張感を維持するためにも18日の午後に
予約をいれた。

========================
2回目
                            1996年12月18日

  講習会を入れればこれで鴻巣試験場にも5回目である。雰囲気にもだいぶなれてき
た。奇しくも今日は2コースである。

  1回目が1コースであるため、初めて受験する様なものだ。2コースは、外周を周
らず、すぐに右折して見通しの悪い交差点通過、8の字、踏み切り通過、坂道発進と
続き最後の最後に、一本橋、波状路、パイロンスラローム、急制動をして終わりであ
る。

  要は不安個所が最後に来るコースになっている。(書きながら思ったが、4年経っ
た今でも、1コース、2コースとも鮮明に思い出すことができる。それほど当時真剣
に憶えたのだろう。この集中力をほかでも生かせればいいのだが・・・・)

  受験番号は、8番である。
  1回目と同様に30人以上が受験する。1番目と15番目からスタートである。前
回より、順番がくるまで時間はあるとおもったが、あっという間に順番が回ってきた。
しかし、気分は1回目とは明らかに違う。「よし!やるぞ!」意欲的で恐怖感などな
かった。

  前回のステップ忘れも順番通りクリアーした。落ち着いている。「おらおら!こい!」
試験官の合図を待った。「伴野さん、スタートしてください」右下のスピーカーから
合図がある。右手を高らかと肘も曲げずにズバッっと出し安全確認後スタートした。
外周路に入ったら、右ウインカーを消す間もなく右折だ!。「大丈夫、行ける」そう
思った。

  試験には、メリハリのある運転が必要とされる。
  ちんたら走っていては絶対だめなのだ。加速するところは一気に加速。減速も一気
に減速。倒し込むところはパタッと倒さなければならない。要は見ていて気持ちいい
運転を心がけなければならない。

  乗車姿勢も大切で猫背などになっているなどは論外である。その点は自信があった。
狭い道幅を目一杯使って車線変更するなど心がけた。順調に進みとうとう最後の課題
走行までやってきた。

  ここからがリベンジである。先ずは一本橋。試験官の合図を待つ。「どうぞ」。こ
れまた大きなふらつきもなかったが、ちょっと10秒を切った気がする。
  しかし、脱輪よりはました。波状路も前回と同様にクリアーした。とうとう来てし
まったパイロンスラローム!。
  結局、前回の失敗に対する対策は、自分を信じる他ない。試験官の「どうぞ」が聞
こえる。右手を上げて、軽い深呼吸をした後、

  クラッチミート!

=====
パイロンスラローム

  すぐに2速へ入れ、1、2、3、4とリズムをとりながら進む。

  が、次の瞬間、何とバランスを崩した!
  リヤブレーキを踏み、はらみそうになるのを押さえ、立ち上がろうとするバイクを
無理矢理倒した。今となってはそれが何本めのパイロンで起こったか定かではないが 
「失敗した」そう思った。パイロンにもタッチしたかもしれない。

  次の課題である急制動の停止線に止まって、耳を澄ませていた。
  もし失敗であれば「はい、戻ってきて」もしくは「はい、直して」と聞こえてくる
はずだ。続行できるのであれば、「どうぞ」である。

  ドキドキしていた。早く言ってくれ!!
======
クリアー! 

  試験官の声がけだるそうに「どうぞ」と言った。
  私は自分の気持ちに相反する様にゆっくり右手をあげた。
  大きく深呼吸をして最後の課題、急制動へ向ってアクセルを思いっきり開け
た。半クラッチを利用し一気に加速しメーターはすぐに40Kmを差した。
  アクセルをイニシャルに戻し白線を過ぎたら、ゆっくりとブレーキング。・・・
完璧だった。最後はブレーキを緩めて停止する程であった。

  ここで慌ててはいけない。後方を目視し、足を入れ替え3速に入っているギアを1
速に戻さなければいけない。その後発進動作(再度後方確認)をして、目の前の一時
停止へ、この安全確認が終わって外周を横切ればプラットフォームである。

  「これで終わり、これで終わり」と落ち着かせる様に声にだし、スタートした。そ
のままプラットフォームへ滑り込み、スタートした場所の停止線で止まった。この後
は降車動作である。乗車動作もそうであるが今で言うヒップホップの振り付けににて
いる。そう振り付けなのである。

      1.後方確認して、
      2.前ブレーキかけて、(実は最初っからかけっぱなしだが)
      3.足入れ替えて、
      4.ニュートラルにして、
      5.エンジン切って、
      6.後方確認して、
      7.降車して、
      8.スタンド出して、
      9.ゆっくりスタンドにバイクを預けて、
      10.左右確認して、
      11.一歩下がる。


  これだけの動きをスムーズにそつなく行わなければいけない。大きく深呼吸をして
から、一気におこなった。まるで踊っているかのようである。

  全てが終わった。完走したのである。

  しゃがみそうになった。それを堪えてインターホンへ向った。上ずって受験番号と
名前をうまく言えなかった。試験官から何か言われたのだが、何も憶えていない。な
により、これで合格発表まで期待をつなげることができる。

======
待ち時間 

  合格発表まで、他の受験者の走りを少しリラックスした気分でみることができた。
完走できる人の数は半分もいない。
  一本橋で脱輪する人や、コースを走っていて、一時停止などで止まったところで右
手を上げて帰って来る人(スピーカから検定中止を告げられたのだと思う)がほとん
どだ。急制動をやり直しさせられる人も多く、その場合、ほとんど不合格だと誰かが
話していた。

  検定中止になる度に、「あ〜・・」と見ている受験者から声が上がる。みんな自分
の様にショックを受けている。そんな中に、「あそこはああしないと」とか「あれじゃ
ね」とか言っている人がいる。「おい、お前は受かったのか?」と聞いてみたくなっ
てしまう。私のバイブルにも載っていたが「合格していない人の意見は聞いてはいけ
ない。聞くのであれば合格した人の意見を聞け」と書いてあった。

  確かにそのとおりだとその時思った。そこにいるといろんな意見を聞いてしまって、
迷うことになるだけだと思い、その場を離れた。駐車場の車に戻り、聞きたくもない
ラジオを聞いて2時間あまりを過ごした。

合格発表 

  時が来た。
  合格発表を行うと場内放送があった。
  大型二輪は、電光掲示板ではなく、放送で受験番号が告げられる。

  私は、ソファーにすわり、肘をひざの上に乗せて顔を手で覆った。
  受験番号は8番である。
  合格率からいっていきなり8番以降が呼ばれる確率が高い。

 「え〜次は、大型二輪の合格者を受験番号で発表します」

 「3番!」
  俺の前だ!、次は・・・・・・・・・・・・・・・

 「8番!」

  よ、呼ばれた!
  次の瞬間!こぶしを振り上げ立ち上がり「あ゛〜」と叫んでしまった。
  が、今度は力抜け、尻餅を付くようにソファーに座り込んだ。

                 やった!ごっ合格だ。

  力が入らなかった。なんてうれしいんだ。鼻が詰まってきた。
  ふらつきながら、合格者だけの集合場所に移り、それぞれの種別毎に集まった。 
今回の大型二輪の合格者は4人。その中の一人が自分だった。

  信じられなかった。

======
こだわり 

  そこでは今後の予定などの連絡を受けるのだが、まず最初に試験官がこんなことを
言った。

  「合格おめでとうございます。あなたがたは大型二輪で日本でも最高レベルの試験
に合格したのです。誇りに思っていいと思います。これからは上級免許取得者として
みんなの見本になる運転を心がけてください」

  私はその試験官の言葉でハッと気づかされたことがあった。
  そう、「上級免許」・・・・

  私は、これが欲しかったのである。
  厳しい試験に敢えて挑み、苦労をして勝ち取る。
  そのプロセスを越えてきたライダーだけが感じ取れる誇り。
  私は、ずっと大型ライダーはそうあるべきだと思ってきた。 

  だから、今後自分が大型バイクに関るのであれば、絶対に獲得しなければならない
誇りだったのだ。この「上級免許」と言う言葉に、その「誇り」みたいな響きがあっ
た様に思えたのである。
  結局、教習所で取れる様になるのは喜びではなくその「誇り」を獲得するチャンス
を失ってしまう危機感だった。

  教習所が始まればきっと自分は楽な方を選択してしまうだろ。
  でも、それは自分が思うバイクに対する生き方に背を向けてしまうことに思えた。
だから今しかないと立ち上がったのであろう。

  バイクは乗ってどう楽しむかであって、免許取得はそのスタートにしかすぎない。
そのスタートが楽になったことはいいことだと自分も思う。しかし、自分自身にはそ
れが許されなかったのだ。 自己満足だと思うが ずーっと漠然に思い続けたバイク 
いや、自分への「こだわり」だったのだ。

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必然だった 

  2回で合格できた。

  それも初めて走るコースで合格できた。十分満足できる結果だ。これも、講習会で
先頭を走ってコースの走り方を教えてくれた白バイ隊の方々寒い中でも一人一人熱意
をもって教えてくれた関係者のおかげであると思う。感謝したい。

  これで、大型への道程は終了である。
  この合格により、自分のバイクライフに新たな冒険心が生まれた。

  そんな気持ちの時に出会ったのが、そう、BIG1であった。あの存在感。またがっ
た時の威圧感。挑戦状を受け取った気がしたのである。「おい!そこのお前、俺に乗
れるもんなら乗ってみな!」トランザルプの兄気分であるアフリカツインを狙ってい
た私であったがその新たなる冒険心を大いに揺さぶられたマシンであった。

「ごめんアフリカツイン、俺、こいつに乗るよ。こいつを操ってみたいんだ」
  そんな風に思ってしまったのである。

  しかし、今、こうして文章にするために、改めて当時の気持ちを整理して 考えて
みると、あの時、自分がBIG1を選らんだのは「必然だった」

  そう思えてならない。
                                                                  完


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